イスラエル(ISRAEL)

 さて、そろそろ時間だ。17:30発のフライトだが、3時間前には空港に到着していないといけないとのこと。悪名高き?出国審査に対応するためだ。この審査はフライトの時間など考慮してくれないとのこと。バスで12:50頃に空港に着いた。これなら楽勝だな。空港の構内に入ろうとすると、いきなり一人の男に呼びとめられた。おっと、取り調べ対象にはなるだろうとは思っていたが、いささか虚を突かれた。俺をジロジロ見ると、荷物はそれだけかと言う。そうだと答えると、ちょっと俺から離れて別の男を呼び寄せた。そして俺を横目にヒソヒソ話をすると、別の男の方がこっちへ来いと言って、俺をチェックインカウンターの横に誘導した。そこでさらにまた別の男とヒソヒソ話をしたかと思うと、誘導した男は立ち去り、残ったほうの男が俺に近づいた。「英語が話せるか?」と聞くので、少しだけと答えた。ここでもしNOと答えたらどうなるのだろうという興味はあったが、余計なことはしないことにした。すると怒涛の質問が始まった。

 「いつからイスラエルに来ているのか?」「入国してからどこへ向かったか?」(エルサレムという答えに)「エルサレムではどこを回ったか?」「博物館へは行ったか?」(ヤド・バシェムだけだという答えの後、パンフレットを見てダビデ塔を見つけ)「ダビデ塔は博物館だ。何故、嘘をつくのか?」「ダビデ塔で何をしていた?どれくらいの時間いた?」「他の街には行ったか?」(ローシュ・ハ・ニクラという答えに)「そこまでどうやって行った?」「どうしてそんなに荷物が少ないのか?」「どこの航空会社の飛行機で来たのか?」(エールフランスという答えに)「パリには何日滞在したのか?」(乗り換えだけという答えに)「どうして直行便で来ないのか?」「イスラエルに何故来た?フランスやイタリア、他にいくらでも行くところはあるだろう?」(死海に浮いてみたかったという答えに)「どうやって死海を知ったのか?」「日本での仕事は?」「会社名は?所在地は?」「お前がいない間、仕事は他の者が代行しているのか?」「会社のIDカードを持っているか?」「ここの空港までどうやってきたのか?」(バスという答えに)「バスの路線ナンバーは?」「空港に着いてから誰かに話しかけられたか?」「イスラエルではどこに泊まっていたのか?」「どうしてそのホテルにしたのか?」(本で見たという答えに)「その本のどこに載っていたのか見せなさい」「ホテルの領収書はあるのか?」(パスポートをパラパラめくり)「これはどこの国のスタンプだ?」(エジプトという答えに)「何故、エジプトに行ったのか?」等々。やれやれこんな質問で怪しい奴が分かるのかね?言っている意味が分からない質問があって困ったふりをすると、勘弁してくれるのかと思いきや、親切にも別の表現で質問してくる。やっと終わったと思ったら、今度は女性スタッフが来た。さっきの男が側で立ち会っているところで、またいくつか質問を受ける。整合性を取るらしい。質問は終わったようだ。と、思ったらこっちへ来いと言われて、別室へ連れて行かれた。

 入るとどうやら荷物チェックの部屋らしい。何人もの人が鞄を開けられチェックを受けている。俺も一つのテーブルに連れていかれ、荷物を置いた。横にあった椅子に座ると、質問男が透明の使い捨ての手袋をして、荷物を取り出し始めた。それを2つの籠に仕分けしていく。そしてカメラ、電気シェーバー、薬などを入れた籠をさらに奥の部屋へ持って行った。あんまり分解とかするなよー、と思いながら見送った。しかしここに連れてこられるのは一本釣りみたいだ。どういう基準かね?俺は仕方がないとしても、いかにも観光で来たといった感じのおばちゃんとかがスーツケースを開けられて、チェックを受けているのは気の毒な気がした。暫くして奥に持っていかれた籠が戻ってきたので、自分で荷物を鞄に詰める。まあ少ないからいいんだけど。詰め終わって籠をちらっと見ると、家の鍵が隅っこに。おっと危ない。もう少しで帰宅早々トラブルに陥るところだった。続いてボディチェック。くすぐったがりだから、ボディチェックは苦手なのだが、身をよじらせながら何とかOK。どうせなら女の人にやって欲しいよ。男に体を触られるのは最悪だ。この時点で13:50。ちょうど1時間だ。

 次にチェックインカウンターに行って、セキュリティバイザーを連れて来いと言われた。が、意味が理解できなくて、チェックインしてこいと言われたと思った俺はまだチェックインできない航空会社のカウンターを眺めていた。横を見るとやはりチェックイン前に審査を受ける人々が列を成している。この人達もやはりイスラエルの出国審査は噂通り大変だー、などと思っているのだろうか?いやいや甘いよ、君達。俺なんか別室へ連れていかれたんだぜい、などと意味不明な優越感に浸っていると、ようやくチェックイン可能になったので手続きをしようとすると、航空券にセキュリティOKのシールが貼ってないからチェックイン出来ないと言われ、さっきの別室へ引き返してようやく意味が分かった。セキュリティバイザーを呼んで、先程の別室へ行き再びボディチェックの後で荷物を受け取り、セキュリティが航空券にシールを貼った。これでOKなのね。チェックインも終わり、引き返しの利かない出国用のイミグレーションへ向かうエスカレーターまで、そのセキュリティは付いて来た。徹底してますな。こんな善人を捕まえてさー。これで爆弾テロで飛行機が落ちたら承知しないぞと思った。

 成田到着。税関に着くと、荷物を置いてパスポートを渡した。「エッ?荷物はこれだけですか?」「はい、そうです。」「ハッ、ハッ、ハ。はい、どうぞ。」だって。いいねえ、日本は。

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