モロッコ(MOROCCO)
俺を乗せたタクシーが砂漠に足を踏み入れた。砂漠というと砂地を想像するが実はそうではない。砂利と言ったほうが正確か?ナンとも色気のない荒涼とした景色である。4WDなら楽勝であろうが、タクシーだとさすがに揺れる、揺れる。取りあえずは砂丘までの間、この道無き道を行くわけだが車が通った跡がいくつか残っておりそこを辿っていく、と思いきやそうでもない。この運転手はそうせずに道を探りながら車を進めている。何やってんの?という感じだったがやがて事情が飲み込めた。道を辿って走っていた前方の車が時折現れる砂地に足を取られて立ち往生している。うーん、ただ安直に道を辿ればいいというものでもないらしい。暫くすると遠方にお目当ての砂丘が姿を現した。大きいような小さいような、イマイチ大きさが掴めないが、行けども行けどもなかなか近づかない。どうやら、かなりのサイズのようである。砂漠に入って1時間、ようやく車は砂丘の側にあるホテルらしき建物の敷地内へと入っていった。
車を降りて建物の中に入り、テーブルに座ってミントティーを飲んでいると、ホテルの人にターバンを頭に巻かれ、ここで砂丘ツアーの話しになった。ワルザザードで申し込んだ2100DHでのメルズーカ砂丘ツアーはあくまでもこのホテルに連れてくるまでで、ここから先は別料金なのだそうだ。なんだやっぱりそうなの?道理で安いと思ったよ。ラクダに乗って砂丘に入っていき、テントで一泊して朝日を見た後、ここに戻ってくる。で、肝心のお値段は1500DH。はっきり言ってこの状況ではもう相手の言いなりになるしかない。まあ、トータルで3600DHになったが、ネットで知り合ったモロッコ通の人のワルザザード発お奨めツアーは4000DHだったから結局はほぼ一緒か。まあいいでしょう。
ホテルの外にはラクダが10頭以上スタンバッテいて、俺と同様に砂丘ツアーに参加する外人さんも10人くらいいる。あー、こいつらと一緒に行くんだなあと思っていたら、お呼びがかかった。どうも俺だけが先行で行くみたいだ。ラクダに乗るのはエジプト以来5年振りであるが、相変わらずよく揺れて乗り心地はよろしくないですな。ラクダ引きが一人いてそいつに連れられて砂丘の奥へ奥へと進む。途中彼が何かを話しかけてきた。何を言ってるのか分からない。相手は英語は全く理解できないようである。しかし、何とか俺の名前を聞いているのだということに気がつき、お互いの名前を教えあった。ちなみにラクダ引きの名前は”アウマ”というそうだ。さてメルズーカ砂丘であるが、ところどころに草が生えている。これがなければもっと見た目はよくなるんだけどなあ。だが、起伏に富んでいるので見た目はやはり面白い。夕日が沈む景色を眺めながらラクダは進む。しかし後続はまるで来ないなあ。ひょっとして、このアウマと二人だけで過ごすのか?と思っていたらテントが現れた。テントのサイズからいってどうやら本当に二人だけのようである。
アウマが食事の準備をする間、辺りを歩いてみた。この砂丘の砂だが、赤みがかっていてサラサラで、手に取ってみても風が吹くとサーっと手から零れ落ちるといった感じである。こんな砂を見るのは勿論初めてである。テントに戻るとアウマがテントの外に毛布を出してくれたのでそこに寝転がる。空は半分くらい雲で覆われてしまっている。ケッ、ツイてない。満天の星を眺める予定であったのに…。まあ今は雨季らしいから、雨が降らなかっただけでもラッキーと思うべきか?しかし雲に隠れていない部分はやはり凄い。かなりの星が垣間見える。月は三日月。砂漠には満月が似合いそうだけどねえ。そうしているうちに食事が出来たみたいである。テントの中に入る。ノマド式テントといわれるそのテントは木で骨組みをして布?で覆っただけの簡素なものである。そこで出てきた料理はまたもやタジン。アウマはノマド式タジンだと説明してくれたが、要は肉ジャガである。玉ねぎの煮え方がイマイチだったが、それ以外は美味かった。このアウマが飼っているのであろうか猫が突如現れ、二人と一匹で食事を共にした。さて食事も終わって外に出ると、さっきまで空を覆っていた雲は見事に姿を消し、期待通りの満天の星空が広がっていた。いやー、しかし凄い。他に形容する言葉を考えてみたが、何もない。ただ凄い。それだけである。これだけの星を見たのは初めてだ。数えようと試みるがすぐに断念する。100や200は楽勝で、1000くらいは余裕でありそうだ。途中、流れ星も空を駈ける。これは眼鏡をかけて寝るしかないな。アウマはもし寒かったらテントの中に入ってくればいいと言って、テントに入っていった。
目が覚めた。寒い。当然星明り以外に光はない。ペンライトを探って取り出し、時間を見ると3時であった。秘密兵器であるホッカイロを取り出す。最終兵器として体に巻くためのサランラップも用意していたが、ホッカイロだけで何とか寒さは凌げそうだな。空は星明かりのみで、聞こえる音は風の音だけ。流れ星も一晩で10回以上は見ただろうか。日本では絶対に体験できない場所である。序々に空が白み始めてきた。それと並行して光の弱い星は姿を消して行く。こうして砂漠での一夜が過ぎていった。さて、朝を迎えて朝日を見に行こうということになった。すこし小高い所を目指して丘を登る。これが足を取られて思うように進まない。が、何とか到着。土産として持ち帰る為に砂丘の砂をペットボトルに詰めながら、朝日を待った。まあ、朝日については、うーん・・・。勿論悪くはないが、夕日のほうが微妙な色が出る分だけ数段絵になるかなとは思った。さて、朝日を見てテントを後にする時になって、俺はアウマにあげるチップのことを考えていた。20DHくらいで喜ぶのかな?と思っていたら、アウマは俺を呼び寄せ、化石らしきものを俺の前に広げ出した。あー、そういうことね。しっかりしとるね。じゃあ、これをチップ代わりにすればいいってことだろう。本物かどうか分からないが砂の結晶らしきものを買うことにした。で、いくらと聞くと砂に200と書いた。はあ?!まあいいや、と思って値切らずに200DHを払った。アウマは嬉しそうに本当は2700するんだとまたも砂に書く。まあ嘘だろうが、サンキューサンキューと礼を言った。帰りはラクダを自分で運転させてもらった。
ホテルに戻ってシャワーを浴びた。ここでアラブ式トイレなるもので大を初体験した。まあ例えて言うなら、和式スタイル&手動式ウォシュレットといったところか。しかし未だに疑問である。まあ用を足すまでは日本の和式トイレと一緒だ。その後、水をすくってお尻を洗うのは良しとしよう。バケツで後を流すのもまあいいでしょう。しかし濡れたお尻は一体どうするのだろう。そのままパンツを履いてしまうのか?それともそれ用のハンカチも持っているのか?それとも普通のハンカチを共用で使うのか?今回はトイレの横にシャワーがあったので問題なかったが、この疑問は残ったままだ。誰か教えてくれー。