ニューヨーク(NEWYORK)

 生まれもっての資質なのか、はたまた偏差値教育時代の真っ只中を生き抜く上で知らず知らずのうちに身につけてしまったのか定かではないが、暗記力というものに昔から結構長けていたりした。例えば、日本史でいうと元々好きだったこともあるのだろうが、大抵の人が苦労するらしい年号の暗記でも殆んど苦にすることはなかった。まあ、一応自分なりのコツというものがあって、そういった年号は背番号と見做して記憶するようにしていた。例えば、イチローの背番号といえば51がすぐに頭に浮かぶ。50でも52でもそれは気味悪いものであってしっくりこない。イチローといえば51なのである。それと同様に日本史の年号も、その数字でなければしっくりこないようにイメージとして覚えてこんでしまうのである。

 この手法によって、“鳴くよウグイス”などとしなくとも、平安京といえば794だし、保元の乱といえば1156だし、御成敗式目は1232であって、本能寺の変は1582なのである。本能寺の変に至っては6月2日という全く何の役にも立たない日付まで何故か頭に入ってしまっている。その他にも、歴代内閣総理大臣は流石に忘れてしまったが、徳川十五代将軍は未だにすらすら言えてしまう。家康、秀忠、家光、家綱、綱吉、家宣、家継、吉宗、家重、家治、家斉、家慶、家定、家茂、慶喜。ほらっ!ってこんな事いつまでも覚えていてどうすんだ、バカ。と毎回思うのだが、足利将軍と北条執権に手を出さなかっただけ良しとしようと自らを慰めて終わるのが常となっている。こういった情報はとっとと消したくて、何度もデリートフラグを立てているのだが一向に消去されず、その代わり仕事などの必要な情報は空き容量不足のせいか、まるで書き込まれなくなってしまった今日この頃。三つ子の魂なんとやらですか・・・。さて、前置きが長くなってしまったが、日本史同様、海外旅行についても何年何月にどこに行ったという事は頭の中に全て入っており、その近辺で起きた出来事もその旅行にリンク付けすることによって日付情報が記憶されている。今回はそんなお話。。。

 ブルーノート・ニューヨーク。有名ミュージシャンを多数ブッキングし、老舗のヴィレッジ・ヴァンガードを猛追、東京にも支店を持つ有名なジャズライブハウスである。東京の店にはまだ行ったことはなかったが、ジャズ喫茶へは割と足繁く通っており興味もあったため、生のジャズ初体験だ〜!ということで電話にて予約を入れ、開店時間の少し前に店を訪れた。すると既に行列が出来ていた。当日の演奏が誰なのかも知らない状態だったので予定表を見ると、「スパイロジャイラ」、その時は知らなかったが、有名なフュージョンバンドだということを後に知ることになる。暫くの間、店の入口付近でチラシ等を一通り物色していると、入店待ちで並んでいた列が進み始めたので最後尾に加わった。すると、チラシを見ている時に日本人とおぼしき男が目に入っていたのだが、その男が計ったように自分の後ろに並んだ。これって勘違いされるんじゃないの?と危惧していたが、案の定仲間と店員に思われたみたいである。ステージと垂直にテーブルが何列か並んでいるのだが、その男と向かい合わせの席にされてしまった。折角ニューヨークに来ているというのに真正面に東洋人顔というのも何だか味気ないのぉと思いながらも、まずは店内を観察する。ライブハウスだとこんなものなのかも知れないが、予想以上に狭い。しかし、逆にいうとどこの客席からでもステージまでの距離が凄く近いワケで、自分の席からだとステージまでわずか3メートル程度。これまでコンサートホールや野球場で米粒のようなミュージシャンを見てきた自分としては、こんな至近距離でステージが見れるのか〜と感激し期待はいやが上にも高まった。

 しかし、開演まではまだ時間があったため暇を持て余してしまい、ちびちびとビールを飲みながら、目の前に座る日本人らしき男に目をやった。小柄で無精ヒゲをはやしており、年齢は自分よりやや上といったところか?暇だし、まあいっかと思い「日本の方ですか?」と話しかけてみると、「そうです。」との返答。聞くと、ここ数ヶ月海外旅行を続けており、ヨーロッパからアメリカ大陸に最近渡ってきたとのこと。なるほど、道理で小汚いワケだ。言われてみれば、長期旅行者特有の疲弊感も見受けられる。「何か日本のニュースあります?」と聞いてきたので、最新の話題を投げかけてみた。「今度、皇太子が結婚するらしいですよ。」しかし、それは知っているとのこと。じゃあ、これならどうだ?「貴乃花と宮沢りえが婚約したんですけどね。」「いや、それも知ってますね〜。」「それが婚約破棄になるらしいっすよ。」「ナニッ!それは知らない!」

 勿論、その日のスパイロジャイラのステージも非常に素晴らしいものだったのだが、この日本人旅行者との会話が印象深く残ってしまった。これにより、ジューンブライド(皇室でもこんなもんに拘るんだなと思ったので覚えている)だった皇太子・雅子さんのご成婚は1993年6月、貴乃花・宮沢りえの婚約破棄は1993年1月という二つの日付が脳内データベースにインプットされた。ちなみに、貴乃花についていえば、その丁度10年後の2003年1月にキューバへ旅行した際、アメリカからの帰りのフライトで手にしたスポーツ紙で初めて彼が引退したことを知った。これにより貴乃花の現役引退は2003年1月であるということも記憶されてしまっている。婚約破棄に現役引退、貴乃花本人にしてみれば、そんな余計なもの覚えてくれるな!といったところであろうか?

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