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COLUMN
松阪さん

2001.10.17


この時節になると、鍋が食べたくなる。僕は鍋好きで家にはいろいろな鍋をそろえている。電気鍋、すき焼き鍋、しゃぶしゃぶ鍋、土鍋。そして鍋料理の本。密かに料理好き。
鍋料理もたくさんあるが、博多を代表するのはもつ鍋と水炊きの2つになろうか。もつ鍋は専門店で食べるのが一番美味しい。今腸を食すにはかなりの覚悟が要る。水炊きは、家で食べてもそこそこ味は出る。何故か無性にすき焼きが食べたくなった。これ以上、牛を攻めないでくれ。牛の肉そのものよりも牛のエキスとかそんな骨髄が入りそうなもののほうがはるかに危険で、肉自体にあまり危険性はないのではないかという気がしていた。そして、そんな良い肉も安く買える気がした。熟慮に熟慮を重ね、安易に良い牛を食べれば、とりあえず大丈夫なのではないかという気もして。そこで佐賀牛を購入しようとスーパーへ行った。
いまや人気のない牛肉コーナー。しかし、そこには同じ感覚で佐賀牛に手を出す人たちがいた。やはり。すこしばかり見栄えの良い佐賀牛だった。先客が手を伸ばしたその刹那、僕たちの目にはもっとキレイなピンク色をした肉が目に入ってしまった。トロのようにオーラが出ている…松阪さんだ。バブルの頃はたまにお世話になっていた松阪さん。普段家庭で食する肉の5・6倍はする食材だ。それが、なんとその半額以下の値段になっている。とても狂ってるとは思えない…。松阪牛、僕たちは敬意を表して松阪さんと呼ぶことにした。呼び捨ては許さない。そんな松坂さんに救いの手を差し伸べた。こっちへおいで。いや、どうでしょうか。
そんな経緯で松阪さんは我が家にやってきた。ようこそ。いつも適当に作るすき焼きも今日は緊張したムードが漂い、新調に食材を並べながら入れる。豆腐・深ねぎ・春菊…。松坂さんには、少しづつ入浴してもらい、話しかけながら、その色を染めていった。タイミングをみながら、食した松阪さん。お懐かしゅうございます。それは、もう食肉の世界を超えた別世界へ誘ってくれました。松阪さん、またお逢いしましょう。

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