COLUMN | ||
ツバメ | ||
2001.10.16 |
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暑い夏のある日、僕は博多駅のホームにひとり孤独に立っていた。ガンメタリックの車体を揺らして蜃気楼のように現れた。やっと逢えたツバメである。地下鉄の車両が少し新幹線っぽくなった感じと思っていた僕は、新幹線すらもう十何年乗っていなかった。そんな特別な乗車に敬意を表して、指定席を用意した。 いよいよ乗り込む。ドアから入るとかなり広い踊場に赤い流線型のデッキは見たことのない、優雅でなんとも今風なデザインだ。デッキから指定席の車両に入るとかなり乗車している客は少なく、僕的には集中できそうだ。一瞥して感じたのは、僕の既知しているどの列車よりも、その客席や客室内の内装は極めて旅客機のそれに近くて、一瞬その場に立ち止まってしまった。シートに座ると旅客機のシートに比べ横幅や座席間のゆとりも広く感じて、かなり満足のいく質感であった。これでいて、料金も安い。時間をずらし待って良かった。と、そのときは思った。 飛行機なんて、海外旅行などで必要に駆られて乗ることはあっても、気持ちいい乗り物ではない。しかし、機内食や飲み物のサービスは良い。列車だとこれがない、と思っていた。確かにサービスで何か出ることはない。だが、この列車にはツバメレディがいるのだ。かっこいいお姉さんが、ワゴンを押して、飲食物の販売をする。残念ながら行き交うスピードに不慣れな僕にとっては、かなり早すぎてタイミングがつかめない。途中乗車してきた社員旅行の団体がガンガン飲みだして宴会状態になる。僕はあくまでも仕事の打ち合わせなので居ないふりをする。JRといえば、雑誌。週刊誌とスポーツ新聞を購入していた僕は読書に専念する。これも、自分の車で行ってたらできないことだ。ちょっとJRに乗るだけでかなり貴重な体験ができた。 帰りもぜひツバメで帰ろうと思った。気に入ってしまった。しかし、帰りは待ち時間がかなりあったので、有明に乗る事にした。そこで、有明という僕が乗る事になった列車をみて驚いた。ツバメと同じガンメタリックの…。呼称が異なるだけで、列車の型は全く同じなのだった。どうして呼称が異なるのか、未だに良くわからない。しかし、ツバメと有明が同じであるというだけでも大収穫。気付かなければ、僕は一生有明を避けてツバメを待ち続けるところだった。 そんなわけで、僕のJR感は大きく変わり、早くJRで今度は遠方に旅してみたいと思っている。 |
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