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COLUMN
夜をぶっとばせ

2001.11.7


僕が中学生だった頃、友達にもらったビートルズのテープを何度も何度も繰り返し聴いた。別の友達がノートの隅に書いていた落書き。鉛筆で誇らしげに『RollingStones』と書いてあった。それは何だと尋ねると、彼は目を輝かせて永遠にしゃべり続けた。みたことも聴いたこともないバンド。すごく気になっていた。
ある日、映画の新作を紹介する番組をTVでみた。ストーンズの映画だった。ライヴを映画にするってどういうことだろうと不思議に思い、映像をみた。当時みたことも無いような大きなスタジアムなどで屋外ライヴで、雰囲気に鳥肌が立った。観客が揺れている。音楽的には正直、良くわからなかったし、唄もギターも上手くない気がした。
僕の中でビートルズよりも気になる存在になり、気が付いたら、映画封切初日、一回目上映の日に劇場に居た。『レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー』邦題『夜をぶっとばせ』。82年のことだったと思う。上映開始前になると客席から拍手や声援が起こる。そんなこと初めてだ。『A列車で行こう』という当時の僕が知るはずもないジャズのスタンダードが流れると勢いのあるアナウンスと共に幕が下り、奇妙なステージから奇妙な格好をしたお兄さんたちが出てきた。『アンダー・マイ・サム』という曲が始まると映像に釘付けになる。これが、ストーンズか。広い球場の広いステージをふらつきながらリズムをとりステップを踏むミック。
映画というのはストーリーがある。この映画にはストーリーやセリフは一切なし。いろんなスタジアムの演奏シーンが流れる。音楽にあわせて楽屋のシーンなどは挿入される。しかし、すごい迫力だ。僕は一気に魅了されてしまった。
パンフを買って家に帰り、すぐに友達に『STILL LIFE』というライヴアルバムをダビングしてもらい、そしてレコードを買い集めた。ライヴで演奏する彼らの音は、連日公演であっても演奏曲が変わり、演奏が違う。やがて『レッツスペンドザナイトトゥゲザー』のビデオを入手し、何度も何度も繰り返しみ続けた。僕はロックが聴くだけのものじゃないんだと少しづつ意識し始めた。
ミック・ジャガーがソロアルバムを出し、ストーンズにワールドツアーの噂が流れる。福岡にはやはりもう来ないのだろうか。いつまで転がり続けるんだろうか。

© 2001 Techie & K