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COLUMN
ビートチャイルド

2001.10.30


1987年8月22日。10代最後の夏、僕らは熊本の阿蘇にできた野外劇場アスペクタというところにいた。くすミュージック主催、伝説の野外ライヴイベント『ビート・チャイルド』に参加するために。
当時の僕らは所謂フリーターで、何処にも属せず、誰にも縛られず、趣味でバンド活動をしていた。翌日力丸野外スケート場でイベントに出演することになっていた僕らはメンバー3人で阿蘇に行った。オールナイトでライヴを観てそのまま車で力丸へ向かう計画だ。楽器を載せておんぼろのスターレットで陽気に歌いながら高速を南へと向かった。大きな草原に駐車場というより空き地。そこに車を停めた。駐車場は阿蘇独特の茶色い土で覆われていた。曇り空の中、僕らはアスペクタという会場へ入って行った。
このビート・チャイルド何がすごいかというと当時の日本の音楽業界でもトップクラスの面々がこの阿蘇山奥の草原に集結するということで、佐野元春 with THE HEARTLAND、ハウンド・ドック、BOOWY、尾崎 豊、渡辺美里、ザ・ストリート・スライダース、ほか全部で13組ということだけど、悲しいことに思い出せない。ブルーハーツ、岡村靖幸、アップビート、白井貴子、レッドウォーリアーズなんかもいたような気がする。当時では単独で武道館を満員にするといわれたアーティストばかりだった。
ちょうど昼くらいに会場に入った僕らはDブロックとかいう大きな紐で縊られた草叢に腰を下ろす。このチケットを入手するのにも、かなり並んだ記憶がある。前から2番目の区画の割に、ステージは小さく遠くに見えた。後ろをみるとさらに遠くまで丁度スキー場のような傾斜が続く。交通手段のない阿蘇の山麓に日本全国から7万人の観客を動員したというから驚きだ。僕はライヴ前の雰囲気が好きで、野外はのんびりと寝そべったり、野外ならではの楽しみだ。ビールを飲んだり、思い思いに時を過ごした。曇り空を見上げて草原で昼寝。曇っていると油断したら焼けてしまった。

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