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COLUMN
相撲観戦

2001.11.23


数年前に警備ではなくお客として九州場所を観に行った。会社の付き合いで購入したというチケットを頂いたので親を連れて親奉公として観に行くことにした。
九州場所は福岡国際センターで行われる。所謂升席でひと枠いくらというチケットなのだが、値段を聞いてあまりに高価で尋ねたことに後悔し、辞退しようかと思った。とても軽い気持ちで観に行くようなものではない。今思うと警備のときにたくさん来場していた人たちはバブル期とはいえ
ちょっと裕福な人だったのだと改めてそう感じる。
初観戦で中に入り弁当やビールを買って席へ向かう。時間は早いが皆そうしているので従うことに。鉄パイプで組んだやぐらの上に狭い通路と狭い升がある。高くて狭い日本を象徴する国技としてはあまりにイメージ通りといった感。やぐらの傾斜のせいでかなり観易い。が、升は狭い。座布団
が4枚あるが、重なりあっている。キレイな缶詰の灰皿が1つ置いてある。何故キレイなのだろう。丁度1週間くらい経過していたので誰も使わなかったということは考え難い。煙草を吸いながら弁当を食べ、ビールを飲むというのはスポーツ観戦では珍しいことだと思う。年配のおっとりした人達が多いのも印象的だ。
何度かビールを買い足してほろ酔いの上機嫌でいよいよ結びの一番。貴乃花戦だったと思う。大声援の中、敗れた。と、その時。頭上から白い物が飛んできた。危ない。周囲を見渡すとさっきまで温厚に観戦していた年配の品の良さそうな人たちが物を投げている。飛ばしている。座布団だった。何が起きているのか良くわからないでいると細君が座布団を握り締めている。その時、僕は無意識のうちにその座布団をするりと取り上げて、気がつくと投げていた。無性におかしくて久しぶりに良く笑った。座布団は次から次に飛んでくる。気がつくと足元の座布団はすべて飛んでいってしまった。次に考えることは周囲の座布団なのだが、これが殆ど無くなっていた。今思うとどうして座布団を投げたのかすら未だにわからない。
帰りがけに母が灰皿を持って帰るとバックの中に忍ばせていたので周囲を見るとこれも姿が消えている。相撲観戦とはそういうものなのかもしれない。だから、灰皿きれいだったんだ。
相撲を観たことよりも、座布団のことがすごく印象に残ろる相撲観戦。両親は喜んでいたので良い親孝行にもなった。

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